仙台高等裁判所秋田支部 昭和28年(う)218号 判決
被告人に対する本件公訴事実は第一の事実として被告人は起訴状記載の日時場所においてその記載の如く労働事務官松浦義郎が日雇労働者に対し紹介票等を配布しようとした際、同人の胸倉を手でつかまえて押付け且手拳で同人の顔面を二回突き顎部に約十日を要する打撲症を負わせて職務執行に当り暴行を加えたというのであつて、公務執行妨害、傷害の事実であり、原判決は右暴行により公務の執行を妨害した事実を認定し、傷害の事実を認定しなかつたのである。しかし本件の公訴事実は被告人の暴行によつて公務の執行を妨害し傷害を加えたという一個の行為で二個の罪名にふれる場合であるが原審において傷害の点についても審理したところ傷害を認定すべき証拠がなつたかので単に暴行による公務執行妨害の事実を認定したことが明かである。かゝる場合において一個の行為の一面の事実を認めないときは有罪と認めた事実を判示すれば足り、認めなかつた部分について、主文においては勿論理由においても特に判示する必要がないものと解すべきである。
従つて所論のような審判の請求を受けた事件について判決をしなかつたとの論旨は採用できない。